春が訪れると、多くの野鳥が巣作りを始め、やがてひなたちが巣から巣立つ時期が訪れます。
特にスズメ目ムクドリ科の鳥は、その黄色いくちばしと脚で知られています。
散歩中に偶然、地面に落ちているムクドリの雛を見つけた場合、どのように対応するのが適切でしょうか?
保護したいという直感的な感情がわくかもしれませんが、実はすぐに手を出すべきではないケースが多いです。
本記事では、ムクドリの雛を見つけたときに取るべき正しい行動、雛の保護方法、注意すべきポイント、そして保護後の適切な対処法を専門家のアドバイスをもとに詳しく解説します。
自然と共生する意識を持ち、正しい知識で野鳥と接しましょう。
ムクドリの雛を発見したらどう行動する?
ムクドリの雛を見かけた時どうしたらいいのでしょうか?
対処法を紹介していきます。
基本は干渉しないこと
地面にいるムクドリの雛を見かけた時、それらは大抵巣から出たばかりで、基本的には干渉せずその場を離れるのが望ましいです。
これらの雛は飛ぶ技術がまだ不十分で、休息を取っているか、餌を持ってくる親鳥を待っていることが多いです。
ムクドリの雛を保護してしまうと、親子が引き離され、親鳥が近寄りにくくなる恐れがあります。
そのため、ムクドリの雛が怪我をしていない限り、親鳥が戻るのを静かに待つことが推奨されます。
保護が必要な時はどこに連絡するか
ムクドリの雛が重症であるか、親鳥が見つからない場合、地方自治体の野生動物保護センターや該当部署への連絡が最初のステップです。
応急処置を行った後、専門家のアドバイスに従って適切なケアを行うことが可能です。
無許可で飼育することは、野生動物保護の法律に抵触する場合があるので、特に注意が必要です。
ムクドリの雛の保護方法
ムクドリの雛が弱っているなどした場合はどう保護した方がいいのかここでは紹介していきます。
体温維持の重要性
ムクドリの雛は通常、体温が約41℃と非常に高く保たれています。
しかし、寒い気候や雨によって濡れた場合、体温が大幅に下がり約31℃まで低下することがあります。
そのため、保護時にはまず彼らを温めることが大切です。
通気性を持つ箱を用いて巣箱を作成し、掛け布団や毛布を敷いて室内の温度を26℃以上に保つことで、雛を暖かく保護できます。
直接の接触を避ける
ムクドリの雛の体温は約41℃に対し、人間の手の温度は約25℃〜26℃と低いため、直接触ることで雛の体温が急激に下がるリスクがあります。
この急な温度変化は、低体温症の原因となり得ます。
また、ダニが付着していたり、病気を持っている可能性があるほか、人間の匂いが雛に付着することもあります。
これらのリスクを回避するため、軍手や手袋を着用し、直接ムクドリの雛に触れないよう注意しましょう。
水分バランスの維持
温かさを与えつつ、過度に乾燥しないようにすることが大切です。
過乾燥は、脱水症をもたらし、ムクドリの雛にとっては大きな負担となります。
保温する際は、湿度を50%から80%の範囲で維持し、若鳥の健康状態を見ながら調整することが重要です(肌が異常に乾燥していたり、糞が硬い場合は、水分不足のサインかもしれません)。
適切な栄養の提供
ムクドリの雛は代謝が早く、飢えが続くと低体温症になりやすいため、食欲がある時には食事を与えるべきです。
雑食性の彼らは様々な食物を食べますが、自然界で普段食べる昆虫、たとえばアオムシやコオロギなどを与えることが望ましいです。
ミールワームも良い選択肢ですし、もし手元にドッグフードがあれば、それを水に浸して柔らかくしたものを与えても構いません。
水分補給のポイント
食事を受け入れない場合には、スポーツドリンクや薄めた食塩水、ぬるま湯で薄めた砂糖水(またはハチミツ水)を使用して、水分と栄養を補います。
これらが準備できない時は、清潔な水を提供しても問題ありません。
水や栄養液はスポイトで与え、1回に1~3滴が適量です(雛の閉じた口元に滴らせ、自分で舐め取らせます。
必要がなくなれば、自然に舐めるのをやめます)。
過剰な水分摂取は下痢を引き起こし、健康状態を悪化させる可能性があるため、適切な量を守り、雛が多く欲しがっても、一度に多量を与えずに間隔をあけて提供することが重要です。
与えてはいけない食べ物
・ トロピカルフルーツ(例:バナナ)
これらは体温を下げる可能性があり、下痢を引き起こすことがあります。
・ 牛乳や生米、雑穀類
消化できず、消化不良を引き起こします。
・ パン
消化が悪く、そのう炎の原因になり得ます。
雛に与えることがある粟玉なども、同様に消化が困難なため避けるべきです。
リラックスと休養のために
餌を与え、栄養補給をした後は、落ち着いた暗い場所で静かに過ごさせてください(度々様子を見たり、無理に触ったりするのは控えてください)。
見慣れない環境に置かれ、親鳥から離されることは、ムクドリの雛にとっては大きなストレスになります。
彼らがリラックスして休むことができるよう配慮しましょう。
ムクドリの雛の保護が終わった後
弱っているムクドリの雛を保護して、自然に返すまではどうしたらいいのでしょうか?
保護後について紹介していきます。
自立に向けて
保温し、栄養を提供し、休息を十分に取らせることで、体力を取り戻させます。
体力が戻り、自分で食事をしたり、水分を摂ったり、入浴や羽づくろいなど、親鳥から学んだ行動を自立して行えるようになるのを待ちます。
自然への再適応
ムクドリの雛が元気を取り戻し、自立して行動できるようになったら、外の世界へ戻して自然に適応させる準備をしましょう。
健康を回復し、自分で飛び立てるようになれば、ベランダや庭を使って自然に戻す手順を始めます。
ただし、人に馴れ過ぎると野生での生活が難しくなる可能性があるため、保護する期間は短めにすることが推奨されます。
放鳥の最適なタイミングと場所
春の初め(3月の初旬)
春から初夏にかけてムクドリは繁殖期に入るため、この時期に放鳥すると新しい群れになじみにくい可能性があります。
安定した晴天の期間
悪天候を避け、穏やかな天気の日を選んで放鳥することが重要です。
早朝
朝の早い時間に放鳥することで、ムクドリが新しい環境にゆっくりと適応できるようになります。
他のムクドリが集まる場所
他のムクドリがいるエリアは食料が豊富であり、群れの中で生活しやすくなることを意味します。
ムクドリの雛の保護まとめ
この記事が、ムクドリの雛を保護する方法についての理解を深める手助けとなることを願います。
もし偶然ムクドリの雛を発見したら、できるだけ早く自然に戻すことを目指して保護してください。
無許可での野鳥保護は法律違反となる可能性がありますので、特にスズメの雛のように普段は保護すべきでない種については注意が必要です。
しかし、保護が避けられない場合は、適切な環境を提供し、責任を持って世話をしましょう。